なのはが腕の中で頷いた
2016年09月05日

類の後を追って部屋まで付いてきたなのはに「着替えるけど」というと、慌てて廊下に出てドアを閉めた。
「もう入ってもいい?」
しばらくすると幼い尋ね方でなのはが声を掛けるので、類は笑いながら「いいよ」と応えてやった。
ドアを開けると、なのはがそろりと顔を覗かせ、類の様子を伺ってから部屋に入ってきた。
類がネクタイをするのをじっと見つめる。
「お仕事なの?」
また幼い尋ね方をする。
「うん」
なのはの大きな瞳に陰がさし、あまりにも寂しげな様子で類はなのはに手を差し伸べた。
なのはは類の腕の中にふわりと転がり込んだ。
何年も前、まだ高校生のとき、つくしを抱きしめ折れてしまいそうだと思ったことがあった。
なのははそれよりもさらに華奢で頼りないけれど、心地よい温もりは類の腕の中で身じろぎひとつせずに収まっている。
なのはが類の胸に頬を寄せ、両腕を類の背に廻した。
「そんなに遅くならないから、食事待ってて」
Posted by ひむ at 16:31│Comments(0)